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(写真はドイツフライブルクのプラスエネルギー団地。
「ここは子供が遊ぶ所で飛び出してくるよ。クルマは注意してね」という看板です。
道草できる空間がいっぱいありました)

たかつき交通まちづくり研究会では、交通教育(交通安全教育)への関心が高まっている。2/3には、高槻市内で自転車の安全な乗り方に関する講習会が開催される。

 そこで、私は、仙田満・上岡直見編『子どもが道草できるまちづくり』(学芸出版社、2009年刊行)を、一読されることをお薦めしたい。

 本来道路は、子供の遊び場であるだけでなく、近所の人たちが集まって歓談を行う生活の一部でもあったが、自動車に道路を譲ってしまってからは、子供たちも部屋でテレビゲームなどをして遊ぶようになった。また近所の人達の歓談もなくなり、コミュニケーションが希薄な社会となってしまった。

 筆者が小学校へ通っていた時代は、徒歩で通学することが普通であり、先生の目を盗んでは途中の駄菓子屋で買い食いすることが楽しみの1つでもあった。また工事現場にほど近い広場で、かくれんぼすることもあった。

 ところがモータリゼーションが進展して、自家用車が1家に1台から1人に1台になるまでに普及すると、大都市内よりも郊外の方が、誘拐や強盗、殺人事件などの凶悪犯罪が多発するようになった。そのため親御さんの中には、誘拐などを警戒する余り、自家用車で子供を学校へ送迎することが多くなっている。これは親に負担になるだけでなく、校門付近で道路交通渋滞や交通事故が生じるなど、新たな問題が発生している。

 学校側も、集団で生徒を登下校させたり、近所の人達がボランティアとして登下校時に道路に立って子供を見守る動きが起きている。ボランティアの人達の多くが、リタイヤした高齢者が中心であるが、子供と高齢者の心が触れ合えるなど、新たな地域づくりが始まりつつあるとも言える。

 人間生活の基本は「徒歩」であり、本書は通学路という問題を通して交通教育(交通安全教育)を考える上で、大変有益な著書である。(堀内重人