国道171号と府道16号、けやき通りが交わる「高槻市役所前交差点」は、ヒト、クルマ、そして自転車が一日中ひっきりなしに往き来する市内でも有数の交通量の多い交差点です。

この交差点から南へ延びる道(府道16号)の路面に、青い矢印のような形の標示が施されています。

「車道混在(通称”矢羽根”)」といって、自転車の利用者に歩道ではなく車道の走行を促すことと、その適正とされる走行位置を示すものなのですが、これが以前から気になっていました。

地元の利用者らには今更の事かもしれないですが、車道を走ることが自転車にとって安全だとは到底思えないこの道について、とくに問題の顕著な南側からこの交差点へ進んだ場合についてまとめてみました。

この道の車道を南から走ってきた場合、そもそも交差点まで進むこと自体がかなり難しい。不可能ではないにしても、無理なく進めることはごく稀なのです。

車の多いこの交差点では、信号の度に長い車列ができます。交差点から100m以上も離れたスーパーSATAKEの前あたりでもたいてい写真のような状態となります。

しかも、この車列には大型のトラックがかなりの確率で入ってきます。車体の大きなトラックは、車線をほぼ塞いでしまい、自転車が通る余地をなくしてしまいます。

車線が上下で5つもある大きな交差点ではありますが、といって道が広いわけではなく、たくさんのレーンと両脇の歩道を限られたスペースに何とか押し込んでいる格好です。第一車線の幅は3m、幹線道路としてはむしろ貧弱かもしれません。

そもそも、自転車が大型車のすぐ脇を通るのは重大な巻き込み事故の原因となりますね。この矢羽根は自転車をそうした危険に進んで晒す標示となってしまっています。

それでも、何とか車列の脇を通って交差点前まで進めた場合でも、自転車にはなお困難が待ち受けています。第1車線は直進および左折用に指定されていますが、このレーンに並ぶ車は、左折する割合が非常に高いのです。しかも、先にも書きましたが車列には大型の、10トンかそれ以上のクラスの大型トラックが高い確率で混じってきます。

なお自転車は、車線がいくつあっても向かって最も左の、つまり歩道のすぐ脇の第1車線を走ることとされています。矢羽根の標示もこの規定に沿っています。

なので自転車で交差点を直進する際、左折態勢の車の動きを細心の注意をはらって進まねばなりません。しかし実際のところ、次々と左折して行く車に圧倒されるばかりです。

しかも、この交差点では南北方向の青信号時間が非常に短い。約30秒が南北方向に割り当てられているのですが、このうちの10秒近くが右折専用に割当てられているので進むことができません。したがって直進が可能な時間はたったの20秒となります(信号は一巡2.5分)。車列をつくって待っていた車が次々に左折をしてゆくうちに、青信号の時間はあっという間に終わってしまいます。

以上を箇条書きにまとめておきます

難点

・大型車の混入率の高い第一車線
・第一車線に入る車両の過半は左折
・短い信号現示(約20秒)
・交通量と大型車混入率に対して不十分な車線幅(3.0m ※街渠部分含まず)

結果

・交差点へ接近すること自体が困難
・大型車の混入確率が高く、左折巻き込み遭遇の危険性が極めて高い
・直進するには信号現示が短く、高い頻度で左折する車両に進行が阻まれる

現状では、大半の自転車利用者は最初から歩道を選択しています。

それでも車道を走ってきた自転車利用者も、そのほとんどは交差点の手前で歩道へあがってしまいます。

また観察の限りでは、ごく少数の何とか交差点前まで車道を走って辿り着いた自転車利用者も、歩行者信号が青になるのを待って横断しています。車両用の信号での横断は最初から見送っているかのようです。

結果として、この付近では自転車に車道走行を促す矢羽根標示の整備効果は確認できません。この交差点付近において、自転車利用を支えているのは依然として歩道と横断歩道です。

管理者の大阪府は、どうしてこの渋滞発生地で大型車の混入率も高いこの道に「自転車走行空間整備」を、しかも矢羽根形式で実施したのでしょうか。またこの交差点の問題点について把握はされていたのでしょうか。もし把握していたとしたなら、何故対応は図られないまま矢羽根標示を実施したのでしょうか。或いは、そもそも問題は把握すらされていなかったのでしょうか。

なお以上について、ちょうど高槻市が自転車計画を改訂するのに際して意見募集(パブリックコメント)していたのを機に見直しを訴えてみました(注:意見投稿は担当筆者の個人として行ったものです)。その返答はこちらでご覧いただけます。市の前向きな対応を、せいぜい期待をもって見守りたく思っています。

パブリックコメント結果↓ 『たかつき自転車利用環境向上計画』
https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/public-comment/37037.html

(まちとこぐひと)