高槻市では、平成27年に策定した「たかつき自転車まちづくり向上計画」の改訂素案に対する市民意見募集(パブリックコメント)を2022年6月20日から7月19日までの日程で実施中です。向上計画の計画期間は「平成27(2015)年度から平成32(2020)年度の6年間。平成32年度に計画の見直しを行い、平成33年度以降も継続的に自転車利用環境の向上を図ります」とされていましたが、2年遅れて見直しているという現状のようです。

前回の「向上計画」やその詳細版である「実行計画」では、さまざまな政策指標が目標として掲げられていたことから、高槻市民として気になるのは「前回の目標はどの程度達成されたのか?」「達成状況をふまえて、改訂版ではどこまでを目標として設定するのか?」ですよね。

早速向上計画PDFを見てみたところ、達成状況一覧表のようなものはなかったので、しかたなく平成27年の向上計画・実行計画と今回の改訂素案を比較対照して次の表を作成してみました。

たかつき自転車まちづくり向上計画目標達成状況

※1:向上計画素案に記載がないため当会より市に問い合わせたところ、「実績は86台(放置自転車実態調査より)」「令和元年度より北摂他市と台数のカウント方法を揃えたため、大幅に台数が変更」したとの回答がありました。
※2:「向上計画(改訂素案)」では「車道の左側通行の遵守率」とあるのを同一とみなしました。
※3:当初の「向上計画」では「仕事・業務」「観光・レジャー」を目的とした自転車利用割合と記載されていました。「仕事・業務」の部分はミス(不要だった表記)?
※4:向上計画素案に記載がないため当会より市に問い合わせたところ、「不明」「計画目標の項目ではないことから把握していない」との回答がありました。

ざっと見る限り未達項目が多いですね。上記以外の項目では、「自転車事故件数は減少しているが、交通事故全体に占める自転車事故の割合は微増」「違法駐輪の撤去台数は減少傾向。返還率は微増」といった傾向が紹介されています。

当会メンバーから例会で寄せられた主な意見をご紹介します。できるだけ自家用車に依存しない高槻をつくる上で、自転車は重要な役割を担っています。よりよい自転車利用環境が実現できるよう、お気づきの点はどんどん市役所に届けましょう。

〇改訂素案全体について

  • 初回計画の目標達成状況が示されていない項目がある。本来は前回の当初計画で掲げた目標の達成状況を一覧にし、未達原因を分析した上で、今後の目標を立てるべきではないか。実施状況の評価検討を行って対策を検討する場だった「自転車利用環境向上会議」が、ほぼ実施されないまま計画期間が進行し、改定案が役所内で作成されている。といった経緯も、PDCAの「C」のフェーズを不透明にしている。
  • 今回の改訂素案で計画期間が10年に延びており、中間見直しも予定されていないのはなぜ?

〇自転車事故について

  • 自転車に関する交通政策の大きな目的の一つは安全のはず。自転車による事故の件数こそ最も重要な政策指標として目標を設定すべきではないか。
  • 「全国交通事故に占める自転車関連事故の割合は約2割で推移しています」とあるが、明らかに平成27年、28年を境に減少から増加傾向に転じているのでは?
  • 交通事故件数全体に占める自転車の割合の値は、交通分担率(理想的にはトリップ量)に照らして見るべきで、本来はこれだけでは意味はない。概して、公共交通の発達した都市部で高くなる傾向があり、高槻市も全国平均より高い数字になっています。
  • 「自転車関連事故の動向」(P.15)のなかで、対クルマ、二輪車の事故が4割に減少していながら対歩行者の事故は横ばい、という指摘がありますが、グラフを見ると車以外の項目は右軸で、目盛が10倍に拡大されていることに留意。自転車(歩行者)にとって脅威なのは依然として圧倒的にクルマです。全般に行政の自転車計画は、自転車の利用の問題をクローズアップするように図表類がアレンジされる傾向があります。
  • 最近気になるのは「自転車事故件数は減少しているが、自転車事故の占める割合は微増」です。全国的にも、自転車事故の増加(2021年の自転車が絡む交通事故の件数は約7万件。前年から約2千件増)で自転車の安全に関する報道がでています。その中で、「自転車運転者の交通違反がない事故が減少しているのに対し、違反ありの事故は増加しており、運転マナーの悪化が事故増加の一因となっているようだ」の記述がありました。

〇自転車通行空間整備について

  • 『ガイドライン』の示す整備形態3種全ての整備実績があるのは大阪府下では高槻市のみ。専用道、専用通行帯では停止線の前出しや、丁字路での右折待機のための切り欠き状のスペースを設置する等、クオリティの高いインフラ整備の姿勢は評価されるべきです。一方、たとえば富田北駅宮田線の富田丘町西交差点付近など非常に危険な状態で、改善を求めたい箇所があります。
  • 「自転車通行空間の整備総延長」の達成率は少ないですね。専用通行帯は難しくても、自転車がここを走るという箇所については、もっと増やしてほしいです。

〇自転車保険について

  • 保険の加入状況(71.6%)について、設定した目標を上回っているのに「加入が義務化されているにも関わらず、加入率は約7割となって」いると市民を叩いているのどういうことなのだろう?

〇自転車利用促進や交通規則の周知について

  • 交通ルールの周知については、京都市や一部滋賀県でも取り組まれている子供たちへの自転車教室などを高槻市でも取り入れてほしいと思います。
  • 「「自転車利用を促進する取組」については、「とても満足している」「まあ満足している」の合計が約32%となっており、「あまり満足していない」「まったく満足していない」の合計約68%を大きく上回っています。」という記述はおかしい。

〇パブコメの実施方法について

  • 初回計画の見直し期限が平成32年度(2021/3末)だったのを1年延期したことについて、パブコメ実施のアナウンスでも(向上計画の中でも)一切触れられていないのは極めて不誠実。
  • 現向上計画のHPから改訂版の案内へのリンクがなく、計画と改訂のつながりが把握しにくい。